緑内障は基本的に眼圧が上昇し、視神経線維が傷害を受け、視野が進行性に狭くなり、最終的に失明にいたる視神経症です。現在では眼圧が正常な緑内障が大半を占めています。40才を過ぎると20人に1人は緑内障と言われており、現在我が国の失明原因の第1位です。
原因
房水は、毛様体で産生され眼内を循環して水晶体や硝子体などに栄養物質や酸素を供給、また眼圧(眼球の硬さ)を一定に保つ働きをしています。房水の排出路が通過障害を起こし、眼内に房水が停滞すると眼圧が上昇します。この眼圧上昇が視神経線維に障害を与え、視野障害を起こし、最終的に失明に至ります。

ハンフリー視野計:上下左右の直線が交叉する部分が黄斑部の中心。
右目は中心部分をわずかに残して、他の部分は光は感じない、ほぼ失明状態。
左目は向かって左下1/4の部分を中心に視野欠損が拡大。
緑内障の分類
緑内障は、タイプの異なるものがあり、I.原発開放隅角緑内障(Ia.開放隅角緑内障とIb.正常眼圧緑内障)、II.原発閉塞隅角緑内障およびIII.続発緑内障、IV.先天緑内障、の4つに分類されています。
I.原発開放隅角緑内障
この緑内障は、30才以降に発症することが多く、眼圧が正常値よりも高いのに痛みなどの自覚症状が軽度または症状が無くても(目が疲れる、目が痛い、目が重苦しいなどの症状を自覚することがある)視野障害が進行する視神経症です。最近はその7〜8割は眼圧が正常な正常眼圧緑内障で占められています。この緑内障は視野障害がかなり進行するまで全く無症状のため、目の異常に気がつかない怖い緑内障です。一旦神経線維に障害が生ずると、それを元の状態に戻すことは出来ませんので、早期に発見して神経症の進行を遅らせるのが治療の基本になります(早期発見、早期治療)。
早期発見:遺伝傾向があるため身内に緑内障の方がいる場合は、早めの精密検査をおすすめします。また年齢的に40才を過ぎると緑内障が急激に増加しますので、好発年齢に達したら緑内障検診を積極的に受けることが望まれます。早期発見のスクリーニング検査として光干渉断層計(Optical Coherent Tomography: OCT)
が威力を発揮します。この検査を行うことで網膜視神経繊維が菲薄化しているか否かを短時間で正確に検査出来ます。OCTで網膜神経線維の菲薄化が見られた場合は、視野検査を行い視野異常の有無を確認します。
治療
:
1.薬物治療:
眼圧のコントロール(眼圧下降)を目的に、点眼治療を中心に行います。状況に応じて内服治療なども行います。
2.手術療法:
薬物療法で眼圧コントロールが不十分な場合や、視野の進行が止められない時に行います。
II.原発閉塞隅角緑内障
この緑内障は、比較的高齢者で遠視の方に多い緑内障で、急性発症時の症状は原発開放隅角緑内障とは対称的です。急激な視力低下、激しい目の痛み、吐き気、おう吐、頭痛、食欲不振などの症状が突然現れます。急激な眼圧上昇によるもので、時にくも膜下出血と間違われることがあるため注意が必要です。
治療:
房水排出路の通過障害が疑われても、まだ眼圧が上昇していなければ薬物治療をおこないます。また急性緑内障発作予防のためにレーザーで新たな排出路を形成する場合もあります。この緑内障に白内障を伴う場合、白内障手術を行うと、緑内障の急性発作を予防する効果があると言われています。急性に緑内障発作が起こったら、眼圧下降手術を行います。
III.続発緑内障
糖尿病などの全身病、ブドウ膜炎などの眼病に併発する緑内障です。原因疾患の治療に加え、眼圧下降を目的として薬物療法や手術を行います。
IV.先天緑内障
先天性の異常によるもので、出生直後より角膜経の拡大や角膜混濁を伴います。黒目が濁っている、黒目が大きいなど、目の何らかの異常に気がついたら、速やかな眼科的精査が必要です。